本日アップ予定の永久プレパラート2種類。
1つはコケ・シダ。
もう1つは動物組織1。
まずはコケ・シダから。
昨日はそのまんま売りときらら舎ダブルラベル加工を施したものの両方をアップしたのですが、加工してあったほうがいいようなので、今回はまず、そのまんまカートにアップして加工はオプションで付けられるようにします。
このシリーズは肉眼でも結構確認できるので、顕微鏡よりも簡単なルーペで観察するほうがいいかと思います。
(ペン型ルーペも合わせて販売します)
以下の画像のうち「肉眼で見た図」はデジカメで普通に撮影したものをトリミングしています。
なお、苔と羊歯(シダ)については一番下に説明を書いています。
苔の雄性株 / Staminate of Moss
肉眼で見た図
顕微鏡画面に入りきらないので2枚を接続合成しています。
苔の雌性株 / Pistillate of Moss
2枚の顕微鏡画像を合成しています
苔の胞子嚢 / Sporophyte of Moss
苔の杯状体 / Marchantia Thallus of Moss
シダの胞子 / Spore of Fern
シダの前葉体 / Prothallium
幼胞子体 / Young Sporophyte
シダの胞子嚢 / Sporangia of Fren
シダの茎断面 / Stem Section of Fern
【苔のこと】
父が生前、元気で盆栽展などに出品もしていた頃、町の駐車場の隅っこで何かを拾っている父を見かけました。
「何してるの?」と聞くと、苔を採集していたとのこと。
「勝手に取っちゃだめなんじゃない?」と言ったわたしの言葉を受けて、駐車場の持ち主にことわりに行ったところ、「苔なんてないほうがいいんだ、どんどん取ってくれ。」と。
父は、「ほらね。」と言わんばかりに、「おれだって神社や公園に生えている幸せな苔は取らないよ。」と言っていました。
父が丹精した盆栽はもうありませんが、大きなサボテンと苔が残っています。
現在はタマゴケとスナゴケとギンゴケがカフェのワークショップにも活躍していますが、ワークショップには使わない苔ではクマムシを飼っています。飼っているというより、もともと居た彼らを顕微鏡で探しては観察しているのですが。
ところで、苔は普通の植物とはちょっと変わっています。
まず、苔には根がありません。仮根とよばれる根っこみたいなものがある種類もありますが、これは岩などにくっつくためのもので地下の養分を吸い上げるものではありません。苔は全体で空気中の水分とそれに微量に含まれる栄養を吸収しています。
苔は、胞子から育ちます。プレパラートの「胞子」は拡大してみると木の実みたいでとても可愛いです。
ここから原糸体が伸びてきます。そこから芽が出ます。茎葉体と呼ばれます。これが成長すると雌雄ができます。プレパラート最初の雄性株、雌性株がそれです。雄性株の造精器から精子が放出され、造卵器へたどり着き受精します。
受精卵または接合子と呼ばれるものとなり、成長して胞子体となります。胞子体がさらに成長して胞子嚢ができ、胞子嚢から胞子が放出されます。
タマゴケはこの胞子嚢が小さな風船みたいで可愛いですが、プレパラートのものはもじゃもじゃしています。
【シダのこと】
通常「シダ」と呼ばれる葉っぱは、胞子体です。この胞子体の裏を見るとつぶつぶがある時があります(結構気色悪いです)。
この胞子体には地下茎とそこから生えた根があります。これが苔とは違うところです。
葉の裏のつぶつぶは胞子嚢の集合体です。ここから胞子が放出され、やがて細胞分裂をして前葉体となります。前葉体はハートの形をしています。前葉体から生えているのは仮根で、これは苔と同様の役目をします。
前葉体には部分的に雌雄があります。ハート型の上のほうが雌で下が雄です。そして雄の細胞で作られた精子が雌の細胞で作られた卵子と受精します。なので、前葉体から小さなシダが生えている標本があったら、それがハートの上の部分、つまり雌細胞から生えているのを観察してみてください。この小さなシダからは根も生えてきます。
今回の標本(多くの標本)では前葉体からはもじゃもじゃした仮根しか生えていないものが多く、幼胞子体ではすでに前葉体の形はわからないので残念です。